中島の秋を彩る風物詩!お熊甲祭に行ってきました

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こんにちは!8月より能登スタイルでインターンシップをさせていただいている「栞」と申します。これからよろしくお願いいたします!

今回は七尾市中島町で毎年9月に行われるお祭り「お熊甲祭」の様子と、その物語についてお伝えします。

お熊甲祭とは?

お熊甲祭とは、中島町の「久麻加夫都阿良加志比古神社(くまかぶとあらかしひこじんじゃ)」を拠点に行われる伝統的なお祭りです。毎年9月20日に行われることから、「二十日」の別名も持ちます。
猿田彦と呼ばれる赤い天狗の面を付けた男性が行列を先導し、大枠旗と呼ばれる高さ約20メートルの大きな旗が続きます。太鼓や打楽器の行列も賑やかに猿田彦の後に続いて、阿良加志比古神社の本社に参入します。

「イヤサカサー」などの地域独特の掛け声も特徴です。本社では猿田彦がユーモラスに舞い、神様に踊りを捧げます。一方で、お旅所(神を乗せた神輿が旅の途中で神輿を鎮座し、休憩する場所)である加茂原では枠旗を用いた「島田くずし」という大技のパフォーマンスも披露され、こちらも非常に盛り上がります。

神輿行列の秘密

神輿行列が行われる目的は、御幣につづく神輿に乗った神様を各集落に1泊させて、翌日お神輿に神様を乗せて帰させることです。神輿行列を行う団体は、各集落の住民が集まってつくられます。神輿行列の最大の魅力は、何といっても大枠旗

旗竿には、杉の丸材が用いられます。旗の先端についている、大きな竹製のとがった部分は「ドンボコ(ドボンゴ)」。ドンボコが長いのは、集団同士が「他の集団より高い旗にしよう!」と張り合うことでだんだん長くなっていったそうです。
旗竿制作で大切なこととして、旗に巻くしめ縄があります。しめ縄のねじる向きは左巻きと決まっていて、左を大切にする風習が由来です。 しめ縄のなわは雲や雷など、色々な意味があると考える住民もいます。

行列の先導!猿田彦

神輿行列を引っ張るのは、猿田彦と呼ばれる先導役。猿田彦は全員、鼻高面(はなたかめん)と呼ばれる赤い天狗のようなお面を着けてまちを練り歩いたり、舞を披露したりします。鼻高面は時代や集団によって少しずつ異なりますが、鼻高面に共通した特徴として、①顔が真っ赤 ②鼻が高い ③目が金色をしている という3つがあります。
中島町横田1部にある「中島お祭り資料館・お祭り伝承館(祭り会館)」には鼻高面が数多く展示されており、その個性や歴史を体感できます。(私はお熊甲祭当日に会館を訪れたのですが、その日使われているいくつかの鼻高面はショーケースから取り出されており、現在も使い継がれているのだと実感しました。)

また、鼻高面とは別に、ばば面というおばあさんをかたどったお面も存在します。この面は阿良加志比古神社本社での祭りに使われているのですが、詳細はよくわかっていないそうです。
一節には、阿良加志比古神社には能の役者が関わっていたため、その名残ではないかといわれています。ばば面は鼻高面とともに祭り会館に展示されており、たくさんの面がずらりと並んだブースは圧巻です。

今年のお熊甲祭、これからの中島町

今年のお熊甲祭は、特例として9月21日に開催されました。しかしながら、豪雨の影響から当日朝には祭りの中止が発表され、神事のみを行い、神輿行列も希望した団体のみが行うこととなりました。しかしながら、まだ大雨には至っていなかった朝の阿良加志比古神社には住民や見学者が数多く集まり、本社で行われる神事をじっと見つめていました。
神輿行列も雨に負けず賑やかに声を出し、音を打ち鳴らして神社付近を練り歩き、その熱気は雨が降っていることを忘れそうなほどでした。例年とは異なるお熊甲祭ではありましたが、人々の熱意や祭りへの思いは例年にも負けない、ひょっとすると例年を超えるほどのエネルギーだったのではないでしょうか。

お熊甲祭での神事を終え、お祭り会館に訪れました。たまたまいらっしゃった郷土史家の唐川さんにお話を伺うことができました。唐川さんは、能登半島地震は自然の生活をしている以上、仕方ないことだとお話されました。自然と共に生きていれば自然災害からは逃れられないし、それでも生きていかなければならない。祭りごとも同じだと唐川さんは話します。
「言い訳を探してやめることはできるし、いくらでも理由は作れる。それでも、できる範囲内で続けていくことが大切。」祭りごとを未来に残していくためには、何を省略して何を残すかを検討することが求められます。「祭りをすることは復興において後回しにすることではなく、地域のこれからのためにやる必要がある」長年祭りを見守ってきた唐川さんの言葉は、私の心にもぐっと刺さりました。

今地震を受けた上で、何ができるか?それを、神様は上で見ていてくださるはず」これも、唐川さんの言葉です。自分の行動は他人に見せているものでもあり、見られているものでもあります。私も神様に恥じない、周囲に恥じない行動を心掛けたいと強く感じました。

お熊甲祭の見学を通して、私の中の「復興」のあり方は大きく変化しました。天候の影響により一部の行事が制限されたにもかかわらず、これほど多くの人々で大きな賑わいが生まれることに深く感銘を受けると同時に、お祭りのもつ特別な力を感じました。物理的なインフラの復旧や建築物の再建が最優先で進められている中ではありますが、祭りや伝統文化などを守りながら、それらを通じて地域の人々や訪れる人々が交流し、共に心のつながりを深める「心の復興」にも目を向けるべきではないかと考えるきっかけになりました。
「よそもん」である私にできることは小さいかもしれませんが、こうして能登地方のお祭りを積極的に訪れたり、言葉にして発信したりすることで、1人でも多くの人に大切な能登の物語を繋いでいきたいと思っています。

インフォメーション

中島の秋を彩る風物詩!お熊甲祭に行ってきました
施設名
中島お祭り資料館・お祭り伝承館(祭り会館)
住所
〒929-2226
石川県七尾市中島町横田1−148
営業時間
9:00~17:00(月曜日定休)
電話番号
0767-66-2200