石川県鳳珠郡能登町越坂。ここに内浦の景色が広がる九十九湾を眼下にゆったりとした時間が流れる宿、百楽荘はあります。百楽荘は、「百の楽しさを有する旅館」、ということですが、今回は私たちが体験した楽しさのいくつかと女将さんの熱い想いを皆さんに紹介します。
とにかく綺麗。絶景九十九湾
百楽荘に着いた私たちは、前日三井町のかやーてで、かまくら作りと宴会で体力使い切ってしまったこともあり、しばし休憩ということで最初に喫茶スペースに案内してもらいました。入るなり目の前に飛び込んできたのは、様々な入江と島からなる綺麗な九十九湾の景色。「・・・、凄い!」
あまりの美しさと爽快さに疲れを忘れてシャッターを切るメンバー(笑)。それもそのはず、ここ九十九湾は日本百景にも選ばれたこともある景勝地なのです。今回は訪問ということで宿泊の予定はありませんが、おいしい紅茶をいただきながら九十九湾を眺めて優雅な時間堪能していると、もう「今日は帰りたくない」とつぶやくメンバーも。この景絶とやわらかな日差しの下お昼寝したい(笑)。
開始10秒!釣れちゃいました
百楽荘の施設の一つとして釣桟橋があり、九十九湾で釣りができます。といっても私たちは釣りの経験は非常に少なく、4人中2人は小学生の頃に数回程度、他の2人に至っては初体験の初心者軍団です。もちろん釣り竿は持っていません。しかし、百楽荘ならそんな心配一切要りません。釣り竿や餌のセットは借りることが出来るのです。
女将さんに教わりながら慣れない手つきで早速開始。すると、グイっと竿の先が引っ張られ、1匹目をGET!開始10秒の出来事で驚きましたが、女将さんによればここ数日、アジがかなり釣れているらしく入れ食い状態とのこと。確かに水面下に魚の群れがいるのがわかります。1時間程釣りを堪能していましたが、気づけばもう合計20匹を超え。メンバー皆、あまりに素晴らしい釣果に大満足して釣りを終えました。
手作業で完成!?洞窟通路と洞窟風呂
釣りを終えてみれば、時間はもう午後6時。釣りで体が冷え切っていた私たちは、体を温めるべくお風呂へ向かいました。九十九湾はリアス式海岸のため、地上の百楽荘と海との間に27mもの標高差があり、海に近い釣桟橋やお風呂、お食事処といった施設は洞窟で結ばれています。不思議な雰囲気漂うこの洞窟ですが、実は写真に写っている部分は手作業で掘って出来たとのこと。大正・昭和時代といったその昔、北陸や北海道には、かまどの石や土蔵の石、家の土台を作る石職人さんが沢山いたらしく、女将さんがその石職人さんの最後生き残りの方と出会い、作業を依頼し、3年弱の月日を要して完成した洞窟通路らしいです。
つるはし一本で石の目を読みながら手作業で掘っていったらしく仕上がりも大変綺麗です。洞窟風呂は残念ながら湯けむりで写真に残せませんでしたが、洞窟の中で海洋深層水のお湯がグリーンの照明で照らされ大変幻想的な空間でした。また、洞窟風呂を進んでいくと窯の露天風呂もあり、おいしい空気と解放感たっぷりの環境で入るお風呂は格別でした。
「挑戦」は終わらない!
お風呂からあがり、夕飯へ。おいしいお食事を食べながら女将さんにお話を伺いました。
女将さんは東京の大学を卒業後、ご両親を支える形でこの職に就き、以来40年以上に渡りこの百楽荘を支えてきました。その歴史の中で不安や悩みは沢山あったという。時代とともに客層が団体単位から個人単位へと変化していく中で、20代30代のお客さんや女性層になかなか来てもらえない状況に悩み、先が見えない不安でいっぱいの時もあったそうです。また、時代に呼応し、様々な施設の増築のなかで、サービスの質の向上との兼ね合いなども大変だったそうで、今でもハード面で他のアプローチはあったのではないかと思う瞬間もあるという。しかし、その様々な葛藤や不安の度、女将さんを支えたものは、「記憶に残る旅館でありたい」という情熱と、お客さんの満足した笑顔や「また来たい」という声にあったそうです。
女将さんは様々なエピソードを話して下さいましたが、中でも印象的だったのは、病気で死期が近いと言われたお客さんが「絶対に退院してもう一度百楽荘に行くんだ」と40年ぶりに訪れてきてくれたというお話でした。女将さんは胸がこみ上げる思いだったそうです。
どんな事情や想いでお客さんが来るかはわからない。だからこそ、絶対に気は抜けないのだそうです。
最後に、女将さんは、「今度は能登の魅力的な食材を訪れた人だけじゃなく他の場所や国の人にも伝えていきたいと思っているの。今色々準備しているところ。今が人生で1番楽しい。」と新たな夢を教えてくれました。
百楽荘の楽しさは他にもたくさんあります。皆さんも楽しさを探り、女将さんの情熱を感じてみてはいかがでしょうか。