「あての森かや~て」というのは、アテ林業が魅力的な石川県輪島市三井町で行われる、光と闇、茅葺き屋根という農村の景観を生かしたイベントです。第3回となる2010年は、2月6日に行われました。
今回は、このイベントにおける地域と学生との関わりとその魅力を紹介したいと思います。
「かや~て」を始めたきっかけは?
このかや~てというイベントは第1回目から東京農業大学の学生と金沢大学の学生との共同のイベントとして行われています。夜の闇に白い雪が光り、人々の笑顔をろうそくの灯が明るく照らす幻想的なイベントなのですが、そのイベントを開催するきっかけを作った、東京農業大学のOGである高梨さんにお話を伺いました。
「大学4年生のときに、大学・地域の人から三井地区はおもしろいから研究室の分室をつくったらどうかという話をいただきました。そこで私は、そういった地域で何かできたらおもしろそうということで移り住みました。ですが、冬になったら大量の雪が降ります。昔は藁草履を作ったり、巻き割りをしたりと仕事があったのですが、今ではそういった仕事がなくなったため、時間をもてあましていました。そのため、ブログにそのことをかいていたら、地元の方に「竹の中にキャンドルともしたらきれいじゃない?」というアドバイスを頂きました。そこに、私のブログを読み込んでいた脇田君(金沢大学のOB)が、そのアイディアに食いついたのがきっかけです。
最初から農大と金大の共同制作としてかや~ては始まりましたね。第1回のときは、金大生がイベントの何日も前から竹を切ったり、企画を考えたりするなど現地に訪れ活動していました。地域を盛り上げたいという地域の人々がひとつになるイベントを起こしたいという思いが農大、金大、地域の人とそれぞれに共通し、能登を盛り上げるためにできることを検討した結果、かや~てを行うに至ったのです。」
学生と地域の方との連携について
第1回目のかや~てでは、あくまで大学生が運営の中心で、地域の人はあまり口を出すことはなかったそうです。しかし、学生が来ることで地域に活力が生まれ、徐々に地域の人がかや~て運営の重要な役職につくようになったとのこと。
地域の方も、「高梨さんのような若いリーダーが絶対必要だし、実際に金沢や東京から学生が来てくれるだけでも涙が出るほど嬉しい」と仰っておられました。やはり、地域活性のカギは「若い力」なのかもしれません。
しかし、決してかや~ての恩恵を受けているのは地域の方だけではありません。現役の東京農業大学の学生さんからも「普段の研究で三井を訪れるときは、地域の方とお話ししてもせいぜい5分の立ち話になってしまいます。でも、かや~ての作業に関わっているとより深い交流ができますし、その方が面白いです。」「先輩から是非参加してみたらいいよ!と言われて参加しましたが、本当に楽しかったし、参加して良かったです。」という声が聞かれました。地域の人と一つの大きなイベントを共同で作り上げることで、学生もまた良い影響を受けているようですね。
高梨さんも、この点については「都会の学生のほうが田舎の風景をあまり知らないので、雪に飛び込んだりして遊ぶんですよ。見ていて微笑ましい気持ちになりますね。また、地元の人は高齢の方が多く、若い世代と求めていることが違ったりするので、それぞれの要望を受け入れてうまくイベントを運営していかなければいけないこともあります。それが楽しいというのはあるんですが。」とのコメント。世代が違えばそれぞれの考え方も異なるようですが、あえてそれでも一緒にイベントを作り上げる作業には格別のやりがいがあるようです。
かや~てのボランティアを終えて
このイベントのために当日農大と金大の学生がしたことは、かまくら作りです。当日は吹雪になるほど雪が降り、大量に雪が積もっていたので、その雪を何とかイベントに活用できないかと鎌倉やトンネル、滑り台などを作って子供たちに楽しんでもらいました。「きれい!すごい!」といってくれたちびっ子の笑顔に私たちも癒されました。
もちろんそれだけではなく、ろうそくを立てたり、ご飯を準備したり能動的に働きました。夕飯のつみれ汁はおいしい上に、冷えた体を心から温めてくれ、お代わりをする学生が続出するほどでした。イベント終了後は心地よい疲労感が広がりみんな熟睡でした。
何もないからこそふれ合いがある、そんな三井町、かや~てに皆さんも足を運んでみてはいかがでしょうか。