私たちの地域づくり紹介
2.「茶の間の観光」にいらっしゃい ! ~七尾の「一本杉通り」~

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七尾に、とてもユニークで面白い商店街があるらしい!――そんな情報を得た私たちは、早速取材をしに行ってきました。その商店街の名は、「一本杉通り」。果たして、一本杉通りの魅力とは何か?また、地域おこしという観点で、この商店街から学び取れることは何か?このようなことを皆さんにお伝えできればと思います。

文化財が立ち並ぶ、一本杉通り


一本杉通りは七尾にある歴史的な街道で、かつて「能登の銀座通り」とも言われていました。他の町や他の県から移住してくる人も多かったそうです。実際に足を運んでみても、なるほど風情のある建物が並んでいます。実は、一本杉通りは国指定有形登録文化財が立ち並ぶ商店街なのです。ただ商店街を歩いているだけでも、昔ながらの建物が私たちを楽しませてくれます。
しかし、こういった「昔ながら建物が立ち並ぶ商店街」というのは他にもたくさんあるはず・・・というのが正直なところ。今は多くの商店街が苦戦を強いられる時代、昔ながらの景観があるというだけで、小さな商店街が発展するとはなかなか考えにくいです。何か、他にも秘密があるはずです。

風情ある「お茶の北島屋」の外観
一風変わった建築(元は万年筆屋さんでした)

花嫁のれん展で一躍有名に!

骨董屋さんで見せてもらった花嫁のれん

実は、この一本杉通りは、タンスにしまわれっぱなしになっていた「ある物」に着目したことで、一気に注目されるようになったという経緯があります。その「ある物」とは、ズバリ「花嫁のれん」。花嫁のれんとは、加賀・能登の庶民生活の中から生まれたとても美しいのれんのことで、花嫁が嫁入りのときに持参する、まさに女性の宝というべき逸品です。

しかし、そんな花嫁のれんも結婚式が終わってしまえば役目は終わり。タンスにしまわれて、次に取り出されるのはいつの日か・・・。こんなに美しいものなのに、もったいない!ということで、商店街をあげて花嫁のれんを集め、展示会を開いたところ、これが女性の観光客から大好評を得て、一躍有名となったそうです(ちなみに、花嫁のれん展は期間限定なので、いつでも花嫁のれんが見られるわけではありません)。

まさに「女性の宝」です

また会いたくなる語り部さんたち

一本杉通りの魅力は他にもあります。それは、とてもユニークな語り部(かたりべ)さんたちです。ここでは、実際に私たちがお会いして、お話を伺ってきた方を2人ご紹介したいと思います。
まずは、骨董屋「竹のはし」の大田さん(写真左)。とてもお話好きで、元気いっぱい!な方です。取材に伺ったときも、とても楽しいトークで素敵な時間を提供してくださいました。そしてもう一人は「お茶の北島屋」の北林さん(写真右)。一本杉通りの歴史を熟知しておられるだけでなく、町おこしの手法についてもアツく語ってくださる方です。このような語り部さんたちとお話をしているだけでも、一本杉通りに愛着がわいてきます。そんな私も、語り部さんたちのファンになってしまいました。

元気いっぱい!「竹のはし」の大田さん
「お茶の北島屋」の北林さんは、一本杉の大黒柱

「その地域にあるもの」を活かし、「何も無いところ」に価値を見出せ!

このように、一本杉通りの観光資源は、歴史的な文化財や花嫁のれんの展示会、そして魅力的な語り部さんたち等に集約されます。これらは全て「その地域にあるもの」。無理に新しいものを引っ張ってくるのではなく、その地域にあるものを活かして地域おこしを行っているという点は、とても参考になるのではないでしょうか。 
また、これらはその地域に住んでいる人からすれば、その地域にあって当たり前のものであり、ついつい「果たしてこんなもので人が呼べるのか・・・」と考えてしまいがち。しかし、地元の人には無価値に見えるものが、かえって都会の人からすればとても価値のあるものに見えたりするのだそうです。先ほどご紹介した北林さんは、「豪華な食事をしてドンチャン騒ぎをするのは「応接間の観光」。一本杉では、そんなものではなく「茶の間の観光」を楽しんでほしい。一本杉のありのままを見て、地元の人と話して、楽しんでいってもらいたい」と仰います。この考え方こそが、一本杉の魅力を支えているのです。

一本杉にとっての観光のあり方も、熱く語っていただきました!

取材を終えて

観光として楽しめただけではなく、語り部さんたちのお話を聞いてとても勉強になることが多々ありました。決して賑やかできらびやかなところではありませんが、地域の素朴な魅力にふれてみたい方、そっと一本杉通りを訪れてみてはいかがでしょうか・・・?きっと、素敵な一日になると思います。