100年後の七尾をデザインする若手建築家。「岡田翔太郎建築デザイン事務所商事合同会社 岡田翔太郎さん」

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この記事は、「能登半島移住計画」(2019年9月22日掲載)から転記いたしました。

能登半島移住計画は2021年3月末で終了いたしました。

岡田翔太郎建築デザイン事務所商事合同会社
岡田翔太郎さん

石川県七尾市出身。九州大学芸術工学部環境設計学科卒業。卒業後、七尾に戻り、岡田翔太郎建築デザイン事務所商事合同会社を設立。人・文化・環境、土地が持つ力を引き出し、その場所にしかない建築を模索中。
2014年、「でか山」をテーマにした卒業設計作品が、建築の甲子園・卒業設計日本一決定戦「せんだいメディアリーグ2014」で日本一を受賞。
2015年にはこれからの活躍が期待される35歳以下の若手建築家を対象としたUnder 35 Architects exhibition 2015 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会(2015)に最年少で出展。

高校卒業後の進路

高校在学時、建築の意匠面が多く学べる大学に行きたいと考えていたと言う。県内の大学も検討したが、どちらかというと土木よりの印象を感じ、視野を広げ県外の大学を探したところ、九州大学の芸術工学部に出会った。
「僕の行った学部はもともと芸術工科大学として独立していたところなんです。建築はもちろん都市計画、ランドスケープデザインといった規模の大きいものからインテリアデザインまで幅広く学べる環境だと感じました。」当時志望校であった九州大学に進学した。

石川から九州へ

九州大学では「全国から学生が集まっていますが、石川県から来たのは珍しかったですね。」石川から九州へ、福岡での大学生活が始まった。「建築以外興味が無かった。ずっと大学の製図室や研究室にこもって建築に没頭する毎日でした。自分の家に居る時間より大学に居る時間の方が長かった。」という。

卒業設計が今の自分を作っている

大学卒業後は地元・七尾へ戻り、岡田翔太郎建築デザイン事務所商事合同会社を設立した。
「建築事務所を辞めたとき、他の事務所に移ることも考えましたが、すぐに地元・七尾でやろうと心が決まりましたね。実は卒業設計を制作する時にテーマにしたのは七尾の青柏祭「でか山」なんです。」
「卒業設計のテーマを決める際に大事にしたのは、建築が社会に対して何ができるのか、どうあるべきなのか?ということ。社会に対し強いメッセージ性のあるものがつくりたかった。ひとつの先鋭的な建築物をつくって終わりではなく、建築がうまれることでまち全体を劇的に変化させることができたら面白い。」

「建築家ですから、空間をつくるのは好きです。でも、それ以上に場所に根ざした建築物、都市計画、まち全体の構想づくりなど、もっと大きな視野をもってデザインしたい。そう考えた時に育った七尾のまち、特に大好きだった青柏祭「でか山」を題材に都市計画を考えてみようと思いました。」
卒業設計の模型は、通常テーブルサイズくらいの大きさが多い中で、全長16mにもなる大作を制作。青柏祭「でか山」をテーマにした卒業設計は、全国から400〜500の作品が集まる大きな舞台、建築の甲子園・卒業設計日本一決定戦「せんだいメディアリーグ2014」で見事日本一を獲得した。
「卒業設計で考察してきたことが、今の自分の考え方につながっていますね。」

日本一を獲得した卒業設計は、七尾に戻った後も注目された。商工会議所に寄贈し、道の駅「食祭市場」で「でか山のまち 100 年後の七尾」として作品展も開催された。「現在は地元の山王小学校と小丸山小学校と山王神社に常設展示させて頂いています。地元の小学校の子供たちはこれからの未来をつくっていく仲間です。でか山のまち構想計画の模型を見てもらって七尾の未来を共有しようと思いました。笑」
「反響は大きかったですね。作品展をして頂いたことで、たくさんの出会いができました。たまたま、観光で来られていた千葉県の方が作品をみられて。今、その方の千葉の2世帯住宅の設計をさせて頂いています。」

建築にかける可能性、まちへの想い

「日本には実はまだ世界に知られていないものがたくさんあって、それらを生かしきれていないのではないかと思います。僕が福岡に居た頃、僕の周りの人たちはでか山の存在すら知りませんでした。3階建てに匹敵する大きさの木造建築物を動かす祭りですよ、しかもそれを動かすのは一般の見物人。世界的に見ても稀な祭りなんじゃないかと思います。でもでか山と同じように国内でも認知されていないものが、まだまだたくさんあるのではないかと思うんです。それは祭りに限られたものではありません。そういった地域の良さ、”そこにしかないもの”を徹底的にまちとして生かすことができれば日本にはもっと面白い場所がたくさん増えると思います。そういった場所を生かす建築をつくりたいですね。」

「例えば、有名な建築家アント二・ガウディ(スペイン)はサグラダ・ファミリア(聖家族教会)など独創的な建築で有名ですが、彼は、地元カタルーニャに対する思いが強く、カタルーニャ独自のアイデンティティを職人たちと共に確立しようとしました。あの場所にしかできないものが世界中の人々を惹きつけていると思うんです。七尾にあてはめたら、どんなものができるのか。モノ・ヒト、文化をもっと生かしてみたい。そしてこれは決して七尾だけではなく世界の至る所であてはまるものだと思います。」

「僕の好きな建築家のひとりアルヴァ・アールト(フィンランド)の建築物は片田舎にあるにも関わらず、今でも世界中の人が魅了され、たくさんの方々が訪れています。建築でまちを活性化していくこともできると思うんです。七尾の個性や可能性を表現していきたいと思っています。そのためには良いものをつくりたいという強い思いをもった人と共に面白い仕事・建築にチャレンジしていきたいですね。」

幼少期から触れてきた七尾の祭りに魅了され、日本一を獲得した若者の挑戦はまだまだこれから。活き活きと話す彼の頭のなかには100年後の七尾の町並みが見えている。

※記事内容は取材時のものです。掲載情報変更の場合があります。
ご利用・お出かけの際は、お問い合わせ先などでご確認ください。

インフォメーション

社名
岡田翔太郎建築デザイン事務所商事合同会社
住所
石川県七尾市矢田新町イ部174-2-202
TEL&FAX
0767-57-5954
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