石川県七尾市満仁町出身
羽咋工業高校卒業後、神奈川県で機械メーカーに就職する、24歳でメーカーの北陸支店へ出向。27歳で七尾に帰り、建築資材の販売を手がけながら、その後、建設会社を設立する。
15年前に法人を廃業し、その後は増改築、リフォーム業に重視ながら今日に至る。1年前に満仁町の自宅の一部を利用して「田舎のカフェいろり庵」をオープン。
この記事は、「能登半島移住計画」(2018年8月9日掲載)から転記いたしました。
能登半島移住計画は2021年3月末で終了いたしました。
高階に隠れ家カフェ!?
最近何かと話題にのぼる高階地区。ここに、田舎の雰囲気を存分に味わえる隠れ家的カフェがあるのをご存知だろうか?
「田舎のカフェ いろり庵」
長年建設業を営みながら、地域を知り尽くした北川さんが一人で切り盛りしている、まさに田舎のカフェだ。
北川さんがカフェに込めた想いや、これまで関わってきた建設業についても聞いていきたい。
住まいに携わるということ
「私はここ高階で生まれて高階で育った生粋の高階っ子です。今年閉校した高階小学校の卒業生なんですよ。私たちの頃は、まだ1学年60人ぐらいいた時代です。小中学校が隣接し、学校を中心に高階にも活気がありましたね。でも当時の若い人たちは日本の高度経済成長期で、都会に働きに出ることが多かった。私も高校を卒業すると東京に本社のある機械メーカーに就職しました。ただ、長男だからいずれは家を継がなければ、という思いがあって27歳のときにふるさと高階に帰ってきました。それから43年余り、ここ高階で暮らしています。2人の息子は都会で生計を立てています。時の流れと共に家族の生活感も大きく変わりましたね。長年、関わってきた建設業も地域の人達との信頼関係や絆で成り立ってきましたが、高齢化などで、私が手がけた家も維持管理にご苦労されたり、空き家になったりしています。自分が手をかけた家には、愛着とともに責任もあります。健康で働ける間は少しでもお役に立てればと、リフォームやメンテナンスなどをしていますし、続けるつもりです。それが住まいに関わった者の責務であり、恩返しだと思っています」
家も生きている
「最近はこのような地域性をもった田舎で空き家は増えていますよね。家は空き家になると10年も経たない内に傷んでしまいますから、空き家問題はかなり深刻なことです。家も人が住んでいてこそ生きていると言えます。人が住んでいないと、家としても成り立たないのではないでしょうか。地域性と家はひと繋がりになっているようなもので、やはり魅力ある家は、その周りの環境や地域性の良さが深く関わっていると思います。高階も立派な日本家屋の多いところですが、空き家が目立つようになりましたね。かけがえのない地域の財産を維持しながら、活かせるような手立てを考えていきたいですよね」
カフェを始めたきっかけ
「やっぱり寄る年波には勝てませんでした。屋根の上で走ったりはもうできませんでしたから。(笑) だけど、家でじっとしてられないし、生まれ育った地元になにか役立つことがあればと。それにテレビで「人生の楽園」を見て、こんな余生にしたいなあって毎回思ってました。それで、平成6年に建てた自分の家は一階の大部分が開かずの間みたいになっていて使っていなかったので、それならこの家でカフェをしようと思ったんです。能登の家は、生活の全てが家の中で行われることを想定して建てられていることが多いです。例えば昔は冠婚葬祭を家の中で行うところがほとんどでした。今はみんな式場など外でやりますから、その分広めに作った家は使わない部屋が出てくるって訳です」
手作りカフェ
「店の内装も仕事場の倉庫にあった使わない資材を使ったり、食器ももらいものがほとんどで、オープンにはほとんどお金がかかっていません。本当に地域の人に助けられましたね。
この仕切りやテーブルも自分で作っちゃいました。(笑) 建設業の知識と経験がこんなところで生かされました」
これが自分のライフスタイル
「やっぱり、田舎でしか味わえないような料理を楽しんでもらいたいですし、話たりすることによって自分もお客さんとの時間を楽しめるような空間にしたいです。これ以上は求めていないし、これが今のライフスタイルですから。商売なんだけど商売じゃない感覚ですね。完全にお金のためにやっていると、たぶん来てくれたお客さんも私も楽しくないんじゃないかな。そういう意味でも今はやりたいことをやれて、本当に楽しんでいます」
高階で何ができるか
「こうやってカフェをすることで、高階に何か貢献できたらという想いはあります。あと、ここ数年で移住者が少しずつ増えてきているということは実感できますし、そのおかげで様々な取り組みが生まれて、高階の魅力が外に発信できるのは良いことだと思います。けれどこの流れをこれから先も継続させていかなければ意味がありませんから。そのためにも、移住者の取り組みに自分たち地域の受け入れ側がもっと呼応する必要はあると考えています。この間の高階小での『廃校中』(廃校を使って子どもたちと逃走中を行うイベント)も素晴らしいイベントだったけど、じゃあこのあと何するかって考えることは、地域に暮らす者にとっても不可欠ですよ」
猫一匹歩いてなかったけど…
「カフェを始めて、地域の人だけじゃなくて県外からも人が訪れるようになりました。近年この地域は、普段なら猫一匹歩いていなかったので本当に嬉しいです。ここに人がいるだけで、それは「賑わい」だと言えると思いますね。沢山の人と交流できることが本当に幸せです。そして、こうやって地域に住んで商売をするだけでも、地域を応援することにつながるのではないでしょうか、これからもできる限り続けていきたいです」
カフェで伝えていきたいこと
「70年も生きてきましたから、もちろん人生の浮き沈みはありましたよ。でもこの長い人生でたくさんの人との関わりがありました。喜ばれるようなこともあるし、迷惑をかけたこともありました。そういう出会いやつながりの大切さを、そして素晴らしい地域の良さをこの店を通じて伝えていけたらなと思います」
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