富山県境の静かな山間で、田舎暮らしと地産地消を自ら楽しむ一家が営むカフェ。
町のみんなの憩いの場
国道249号線から415号線を氷見方面へ。まずは、ローマ法王に献上したことで知られる神子原米など地元の特産品を販売する神子の里を目指して直進。その先にある菅池バス停を下り、谷あいの細い道を奥へ、奥へと進むと菅池町に到着です。
道の途中には看板も出ていますが、迷ったら町の人に尋ねてみてください。町で神音カフェを知らない人はたぶん、いません。
遠くから車でやって来る人お客さんに混じって地元のおじいちゃんやおばあちゃんも、農作業の間にちょっと立ち寄ってお茶を飲む。こんな光景が神音カフェの日常です。
地産地消を心がけて
立派な空鉤(根鉤)がかかる囲炉裏の座敷にソファー、洋楽のBGM。
築70年の古民家を、和の趣を残しながら、居心地のよさを大切に改装した神音カフェの店内は、長居する人が多いというのも納得の空間です。
営むのは、コーヒーマイスターやジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター(野菜ソムリエ)の資格を持つ武藤さんと妻の香織さん。外屋(ぎや・げや)で自家焙煎した豆でいれるコーヒーのほか、地元の野菜や米を使うカレーも評判です。
夏野菜、タケノコ、豚と大根など、季節や時期によってカレーの種類はさまざま。
ココナツミルク仕立てで乳成分を含まない子ども用のカレーもすべてスパイスの調合から行うオリジナルです。
この日は隠し味に手作り味噌を加えた豆と挽肉のカレー。オリーブオイルでソテーしたサツマイモやレンコン、手作りドレッシングのサラダ付きです。
パンやスイーツは香織さんの担当。かぼちゃのベイクドチーズケーキなど、こちらにも地元食材がふんだんに使われています。ふたりが目指すのは地産地消。町内のおじいちゃんやおばあちゃんの知恵を借りながら、米作りや野菜作りも行っています。
八百万の神を感じられる場所
岐阜県出身の武藤さんと能登の出合いは学生時代。輪島出身の香織さんと知り合ったのをきっかけに、食べ物のおいしさや人のやさしさ、自然と人間が深くつながっている能登の暮らしに感銘を受けました。就職した東京で結婚し、忙しい毎日を過ごす中で何か大切なものを忘れていることに気づき、石川に帰郷。カフェを開く準備を進めました。
約70年前に建てられ、3年ほど空き家になっていた現在の店舗兼住居に巡り合い営業を始めたのは2006年のこと。自然と隣り合わせた神々の音が聞こえる里という意味を込めて神音カフェと名付けました。
カフェで地元を元気に
羽咋市の中でも特に深刻な過疎化問題を抱える菅池町の人達にとって、武藤さん一家は希望の星。地元出身ではない「よそ者」を自覚し、独自の目線で菅池町の魅力を引き出してくれる心強い存在です。
武藤さんにとっても、店にお客さんが来ていることを自分のことのように喜んでくれたり、知らない慣習や田舎暮らしの知恵を教えてくれたりと近所の人は生活の大きな支え。
「カフェをしたいと思ったのは、人が集う場所だから。ここは、携帯電話は通じないけれど、それ以上のつながりがあるんです」。
周囲に溶け込み、しっかりと根を張り、新しい風を送り込む武藤夫妻の菅池町への愛情が、カフェに流れる穏やかな空気の源です。
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