自分の奉燈をつくりたい〜祭に惚れた人生〜「西田 大和さん」

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出身:石川県七尾市石崎町 
職業(取材時):七尾市役所 市民生活部 広報広聴課 ケーブルテレビ担当

この記事は、「能登半島移住計画」(2020年4月2日掲載)から転記いたしました。

能登半島移住計画は2021年3月末で終了いたしました。

一生に一度、憧れの役職『支部長』

石川県七尾市石崎町出身の西田さん。親から「日本の中心で勉強してこい」という勧めもあり東京の大学に進学したが、絶対に地元に帰ってこようという気持ちが強かったという。その一番のきっかけは、西田さんの地元、石崎町で行われる『石崎奉燈祭』だ。

「石崎奉燈祭って支部長っていう役職があるんですけど、まぁそれが本当に人生の一生に一回、結婚と一緒ぐらい大事な役職で、若干二十代後半の若者が石崎の、自分の町を動かすというか、リーダーになるというか。それに小さい頃から憧れてて、大学に行ったとしとも絶対地元に帰ってこようという気持ちは強かったですね」

ああ、やっぱりもどりたいなって

今回、私が七尾でいろんな方にお話を聞いて感じたこと、それは祭に対する情熱が凄まじいということだ。「今日祭があるので会社休みます」「はいよ!!」これだ。この会話のやり取りが成立する町。それが七尾だ。ここ七尾で祭は、町全体が、町民全員が盛り上がる一大イベントなのである。能登を代表するキリコ(奉燈)祭のひとつである石崎奉燈祭、そしてその花形ポジションである支部長、小さいころからその歴代の姿を見て育ってきた西田さんにとって、そこは人生をかけるほどの価値がある舞台なのである。

「やっぱり支部長のその姿、その支部長のひと笛であのおっきい奉燈が動くっていうのにやっぱ憧れて支部長したいなって」

大学在学当時も、毎年夏休みシーズンになると、祭に参加するために必ず七尾に帰ってきていたという西田さん。七尾にかける想いは「祭ですね、僕の中では!!」と力強く話してくれた。

ふるさとCM

西田さんは現在、広報広聴課のケーブルテレビ推進室の中でも、撮影・編集をメインにされている。民間とは違い地域密着型のため、題材にするテーマは誰が見ても喜ばれるもの、音楽会、成人式など地元の大きなイベントを撮影しに行くことが多いという。

また、県内で毎年行われるHAB北陸朝日放送『ふるさとCM』にも作品を制作して挑んでいる。

2021年石崎奉燈祭、憧れの支部長を目指して

なんと2021年の石崎奉燈祭で支部長になれるかもしれないという西田さん、その機会を掴みとるため、自分のやりたいことを実現するために西田さんはすでに動き出している。高さ10メートル以上、重さ約2トン、約100人で担ぐ見応えある大きな奉燈を、笛1つで動かす役職の支部長。一生で一回しか回ってこないという大役にむけて気合いは十分だ。

「それに向けてやっぱり今はいろんな準備だったりとか、地域のことをもっともっと学んでいかないといけないし、やっぱり自分のやりたいことってすぐにはできないんで今からもう準備して、それが個人としての一番の課題ですね」

見応え満点の石崎奉燈祭には担ぎ手して観光客の方も参加できるそうなので、ぜひ興味がある方は実際に体験してみてはいかがだろうか。町中が賑わい、夜中まで熱気が溢れ、掛け声とともに町の通りを揺れ動く巨大な奉燈の迫力には、きっと心打つものがあるだろう。

『また帰ってきたい』というきっかけを子供達に与えたい

人が多い時は選挙をして選ばれていたという支部長、やりたい人が皆やれるわけではなかった。しかし現在は『なりて不足』の問題が浮上しつつあるという。

「僕の目線からしたら、僕みたいな祭で七尾に帰ってきたいとか、地域に戻ってきたいって人は減ってきているのかなと、なんとなく思うところがあって。でもそこにはやっぱり僕みたいに祭があってとか、何かきっかけがないと戻ってこれないじゃないですか」 

七尾に戻りたいって思っている子が少ないのは寂しいですねと話してくれた西田さん、今後は『また帰ってきたい』という気持ちを持ってもらえるように、そのきっかけを何か与えたいという。

「僕らが小さい頃って、奉燈の上に乗って笛を吹いている子供達いるじゃないですか。あれも笛の練習が1ヶ月間ぐらいあるんですよ。それとかに僕らも行って、まぁ半分遊んでいるんですけど(笑)、でもそれが1つ楽しみであって、『俺、奉燈乗って笛吹いてるぜ』って、石崎のステータスみたいな(笑)。そういうのがきっかけで、僕は大人になっても支部長したいから戻ってきたいってなったし」

歴代の支部長の姿が西田さんに『憧れ』や帰ってくる『きっかけ』を与えてくれたように、西田さんの支部長の姿も次世代へと引き継ぐ『きっかけ』となるだろう。そうやって代々受け継がれてきた情熱の賜物を、その財産を絶やさぬように、西田さんは本気だ。本気を味わいたい方、ぜひ石崎奉燈祭へ一度足を運んでみてはいかがだろうか。


フォトライター 宮本一輝(石川県小松市出身)
インスタグラム:ciao_vamoskazu

※記事内容は取材時のものです。掲載情報変更の場合があります。
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