能登野菜の生産・能登かきの養殖・かき料理専門店「浜焼き 能登風土」経営
石川県出身、1983年生まれ。パチンコ店勤務、スナック経営という全く畑違いの業種から農業の世界に飛び込み、2018年よりかき養殖も開始
農業を田舎で生計を立てられる仕事に
スナックを経営していたとき、高齢になってもずっと商売として成り立つ仕事をしたいと考え、田舎でできて継続できる人が少ない業種である農業に着目しました。
地方では農業の後継者不足の問題が指摘されており、10年、20年と時間が経てば担い手がいなくなることは見えています。でも、そうなる前からしっかり取り組んでおけば、いざそのときに「酒井に任せればいい」と思ってもらえるのではないかと考えました。
また、農業で生計を立てることは一般に難しいと言われていたので、それならやり方を工夫すればチャンスがあるのではないかと考えたこともあります。実際にやってみると思うようにいかないこともたくさんありましたが、中でも「葉が1枚少ない」という理由でランクを下げられたり、ちゃんとした商品として扱われなかったりする点に苦労しました。
やれている人に聞いて教えてもらう
農業やかき養殖のノウハウは書籍で簡単に学んだあと、教えてくれる人を探して直接、頼みました。田舎は閉鎖的なイメージがあるかもしれませんが、実際はそうでもなく、きちんと頼めば教えてもらえることが多いです。
ただいきなり頼むのではなく、70代、80代の方々がたくさん参加する農協の旅行に20代の自分が1人で参加し、カラオケ係をするなどしてコミュニケーションを取るようにしました。こうして教わるきっかけを得たのです。
かき養殖のノウハウについては飛び込みでしたが、それまでの農業の実績を知ってくださっている方だったので教えていただくことができました。そのときは従業員を1名派遣し、わずか2カ月で基本を習得しています。
夢と想いを伝えることで目的に近づくというスタイル
親を含め、周囲にビジネスをしている人がいなかったので、経営者とのつながりを作るために青年会議所や商工会議所の会員になりました。30歳のときに入会した青年会議所では3年目で北陸の委員長に抜擢されたものの、他の県から来ている副委員長たちが仕方なく担当している人ばかりで当初は苦労したものです。
しかし、彼らとお酒を飲む機会をコツコツ設け、自身の夢と想いを伝えることを続けたところ、積極的に動いてくれるようになりました。その結果、自分1人では達成できないようなことも実現しました。
「自身の夢と想いを伝える」ことで周囲を巻き込み、目的を達成するというスタイルがこのときに確立できたように思います。
今後は「会社の想い」で従業員が働いてくれるように
酒井さんは、今の会社は自身の想いに共感して従業員が働いてくれている状態ですが、これを今後は自身の想いではなく「会社の想い」で自発的に働いてもらえるようにすることが課題と話してくださいました。
また、今後は今の事業に関連性がありそうなビジネス(たとえば民泊など)にも取り組んでみたいとのことです。
小学3年生の頃から新聞配達で自身の小遣いを稼いでいたという自立心旺盛の酒井さん。今の起業家マインドは、こうした経験から培われているのかもしれません。そんな酒井さんに会ってみたい方は、のと鉄道・笠師保駅から徒歩0分の場所にある「浜焼き 能登風土」にぜひ、訪れてみてください。
(文:ふるさとライター 横山琢哉)
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