能登町の宇出津と小木は、海とともに歩んできた歴史を持つ美しい地域です。小木の「和平商店」では、船凍イカという小木のブランドイカを用いた加工品が評判で、多くの人に親しまれています。そして、イカから作られる能登の伝統的調味料「いしり」を生産されている「カネイシ」は、イカ加工品だけでなく、こんか漬けなどの加工品も人気の商品です。宇出津の老舗「大脇昆布」は、代々受け継がれた丁寧な手仕事で知られています。さらに、夏に開催される宇出津あばれ祭や小木のとも旗祭りでは、熱気あふれる伝統行事が地域を大いに盛り上げ、住民同士の絆をいっそう深めています。
能登町にある「大脇昆布」や「カネイシ」、「和平商店」は、「宇出津」と「小木」という地域にあります。
その地域は海に近く、宇出津港と小木港という有名な港を持つ、漁の町です。美味しい海の幸と伝統のお祭りから歴史の流れを感じる「里海」の地域をご紹介します。

大脇昆布は、能登で唯一の手削り昆布のお店で、定番商品の「おぼろこんぶ」や「太白おぼろ」は、手削りのやわらかくとろける食感が魅力で、おにぎりやサラダなど、いろいろなものに足してお召し上がり頂けます。また、トーストにかけるために作られたふりかけ商品「トーストにかけて食べる昆布」は、昆布の塩気と旨味にいしる煎餅の食感がアクセントになり、トーストを美味しく楽しく食べられます。

和平(わへい)商店の自慢は、鮮度抜群の船凍イカ。船凍(せんとう)イカとは、イカを釣った直後に船内で急速冷凍させたもので、限りなく獲れたてに近い状態を維持でき、新鮮です。小木で獲れた船凍イカは「小木物」と呼ばれ、ブランドイカとして知られています。
そんなイカを使った「能登いか煎餅」は、小木で獲れた船凍イカを煎餅状に加工して、じっくりと焼き上げた、イカの旨みたっぷりのお煎餅です。


イカを使った「いしり」づくりは、冬の寒い時期にイカの内臓と塩をよく混ぜ合わせ、タンクに漬込み、その後何度か攪拌を繰り返すうちに、少しずつ「いしり」が完成します。
カネイシのいしりはじっくりと生産していくため、イカの風味が充分に沁みこんだ芳醇な風味のいしりとなるわけです。
カネイシから車で約5分ほどの場所に「イカの駅つくモール」という観光施設があり、巨大イカのモニュメント「イカキング」が施設の敷地で迎えてくれます。その近くにある九十九湾(つくもわん)は、リアス式海岸で入り江が数多くあることから、その名が付いたと言われており、日本百景の一つに数えられる場所です。
また、小木の観光スポットに、縄文時代の遺跡・真脇遺跡(まわきいせき)があります。
縄文人は食料が無くなると別の地に移動していたとされますが、約4,000年間この場所で暮らしていたと考えられています。それだけ長い期間暮らせたのは、今も昔も能登町の自然が豊かだからです。

そんな縄文人が使用していたとされる縄文土器ですが、「世界一の縄文土器」という大きな縄文土器が、宇出津に展示されています。
真脇遺跡のある能登町には、昔から続く時の流れを大切にする心があります。土器の展示があるのは、「時の広場」という場所で、鐘が1日に5回鳴り、それぞれの時間に四季の音楽が流れることで、時の流れを音楽と共に感じられます。
小木のお祭りといえば毎年5月2日と3日に行われる「とも旗祭り」です。明治時代に、遠洋漁業に出た父や兄が無事に帰ってくるよう、子どもたちが願ったのが始まりで、現在のお祭りへと変化していきました。小木港内を高さ約20mの大のぼりを立てた9艘(そう)の船が練り回り、船の中では子どもたちが笛や太鼓を打ち鳴らしています。県の指定無形民俗文化財に指定されるお祭りです。

また「小木袖ぎりこ祭り」は、「袖ぎりこ」と呼ばれる、能登半島では珍しいやっこだこを思わせる形の大あんどんが乗ったキリコが特徴です。毎年9月の第3土・日曜日に行われる秋祭りで、9基の袖ぎりこが小木の街中を練り廻り、クライマックスで小木御船神社の急で細い階段を、キリコを押し上げて登るその強さと迫力は、漁師町ならではの勇ましい祭りです。

宇出津で開催される「あばれ祭り」は、悪病から人々を救うために盛大なお祭りを始めたことがきっかけとされており、毎年7月第1金・土曜日に行われています。男性たちは神輿(みこし)を担ぎ、松明(たいまつ)の周りを回って火の粉を浴び、神輿を川の中に投げ込み担ぎ手も体を清め、八坂神社に入っていきます。漁師町だから、とても男らしく勇敢なお祭りです。

宇出津と小木は、能登の海の恵みと人々の営みが、時の流れとともに育まれてきた、時間の豊かさを感じられる場所です。

