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のとだより
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学生プロジェクト

大野さんと炭焼き


 その1. クヌギの植林から膨らむ夢

 金沢大学の「クラブ炭焼き」は06年10月にできたサークルで、現在学生10人余りが所属している。角間キャンパスに広がる里山で炭焼きを実践しようと、炭焼き窯をつくることから始め、去年の暮れに完成した。しかし、炭を焼く技術はこれから。プロの技を習いたいと話し合っていたところ、珠洲市に大野製炭工場という炭焼き工場があると聞き、インターンシップを申し込んだ。
 代表の大野長一郎さんは32歳で、「能登をお茶炭の産地にしたい」という大きな夢がある。そのため、毎年クヌギの木を1000本植林している。ぜひ大野さんに炭焼きの技術を習うと同時に、お茶炭の産地化の夢を聞いてみたいと思った。
 今回のインターンシップは2度に分けて実施した。最初は去年(08年)11月に大野さんが主催した「お茶炭の森づくり運動」で植林に参加。2度目がことし1月の冬の炭焼き体験だった。それでは「お茶炭の森づくり運動」から報告する。
(インターンシップ参加者:渡邉和哉、古木康大、金子愛里、越野智皓)
 


「みなさん、夢のお手伝いをお願いします」。
 11月16日午前、小雨が降る珠洲市の山中で、「お茶炭の森づくり運動」の挨拶に立った大野さんはこう述べた。大野さんの夢、それは能登をお茶炭の産地にすることなのだ。
 日本の伝統文化である茶道には炭が必需品で、菊炭(きくずみ)とも呼ばれる美しい「茶の湯炭」が使われる。茶の湯炭の原木はクヌギ。茶の湯炭には、胴炭(どうずみ)、輪炭(わずみ)、割炭(わりずみ)、毬打炭(ぎっちょずみ)、管炭(くだずみ)、枝炭(えだずみ)などがある。用途に合わせて形や寸法の違う炭を使い分けるが、茶道の流派で寸法は異なり、ミリ単位で決まっている。品質も厳しく、
 (1)しまりがある、
 (2)樹皮が密着している、
 (3)切り口が菊の花のように割れていて、
    割れ目が細かく、均一である、
 (4)断面が真円に近い、
 (5)樹皮が薄い、
 (6)適度に精錬(ネラシ)がきいている
ことが求められる。
 
 厳密さが求められる茶の湯炭は、当然普通の木炭よりも販売価格が高い。つまり、最高級の炭なのだ。大野さんは、「クヌギの茶の湯炭を作り産地化すれば、能登と日本の伝統文化が結ばれる。そして、何より後進の育成につながる」と話す。クヌギの植林活動は茶道という伝統文化を未来に伝えることになるばかりでなく、里山の保全や生物多様性の保全にもつながる。クヌギは10年で炭焼きに使えるまで成長する。5年前に大野さんが初めて植えたクヌギはぐんぐんと成長していて、「伐採ができる5年後が楽しみです」と相好を崩した。
 
 こうした大野さんの夢が共感を呼んで、「お茶炭の森づくり運動」の輪が広がっている。この日も金沢からの参加者を含め約50人が集まり、250本ほどのクヌギ苗を植えた。山中を切り開いたこの場所はもともと国営農地開発(パイロット事業)で開墾されたところ。その後、放置されていたところを利用した場所だ。二人一組になって、クワで穴を掘り、3年ものの苗木を植えて行く。本来はもう少し本数を植える予定だったが、雨天のため、本数を減らさざるを得なかったようだ。うっすらと汗をかく程度で作業は終わった。
 作業の終了後は、地元の公民館でおにぎりと豚汁、漬け物などの昼食。おにぎりは焼きおにぎりで、珠洲産の天然塩をふったというこだわりのおにぎり。豚汁もついお代わりをしてしまった。
 
 
 昼食の後、5年前に植林したクヌギ林を見学に。クヌギは5年間で約3メートルの高さにまで成長。あと5年たてば伐採し、炭づくりに使える。大野さんの説明だと、伐採した切り株から「ひこばえ」(萌芽)が出て、今度は約6年で炭焼きに適したサイズまで成長するとの説明だった。ただ、クヌギはツルに弱く、絡まれると曲がってしまう。すると、木炭材には向かなくなる。そのため、年に4回ほどはツル切りを行う。「樹木は放っておいて育つものでもない。手塩にかけてきちんと育てる。それは人間と同じ」(大野さん)
 
 
 大野さんが焼いたお茶炭を見せてもらった。菊炭(きくずみ)とも呼ばれるだけあって、切り口は菊の花が咲いたような紋様を描いている。このカタチになるまで、おそらく炭焼き職人とお茶人とが試行錯誤を繰り返してきたのだろう。芸術品と言ってもよいのかもしれない。こんな炭が能登から金沢や京都、東京、そして全国のお茶席に届けられる日がくる。私たちも大野さんの夢を少し共有することができたような、そんな気持ちになった。
 翌日17日、大野さんにすすめられて珠洲市の山々を見て回った。珠洲では揚げ浜塩田による天然塩づくりや、珪藻土のコンロづくり、珠洲焼など山の木々を燃料とする地場産業があり、見学に当たってパンフと地図を提供してくれた珠洲市企画財政課の金田直之課長補佐は「里山の保全は他の地域に比べてもよい状態に保たれている」という。また、全国ではマツクイムシに侵食され一時全滅かといわれたアカマツ林が珠洲には随分とある。そのようなアカマツ林を手入れすることで今度はマツタケの生産にもつながる。大野さんのクヌギの植林地、そして珠洲の山々を見ると「能登の可能性」ということを感じ取ることができた。
 
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